AIと一口に言っても多くの機能や活用法があるため、どこからどう取り組めば良いのかと感じている人も多いのではないのでしょうか。ここでは、AIを導入する際に気をつけたいこと、AI活用による効果を最大限にするためのヒントをご紹介します。
なぜコールセンターでAIが重要なのか
NICEが行った調査によると、92%のコールセンターが、新型コロナウイルスが流行した2020年に大幅な応対件数の増加が見られたと回答しています。
一方で、リソースが限られている中、多くの企業はリモート形態を採用し、AIや自動化といったテクノロジーを取り入れながら、それに対応してきました。AIチャットボットの導入で自己解決を促し、待ち時間の短縮や呼量削減に努めたのがその例です。
多くのコールセンターが、コロナ禍で学んだ最も重要な教訓は、ビジネスの混乱を常にコントロールしたり、予測したりすることはできないものの、予期せぬ事態に対処するための準備については、コントロールできるということでしょう。
AIはコールセンターに、不測の事態にでも対応できる敏捷性を与えることができます。言い換えれば、AIは予測不可能な世界で生き残るための鍵であるため、コールセンターにとって「これまで以上に」重要なのです。
AI導入前に考えるべきこと
コールセンターのAIは、プロセスをよりスマートにし、顧客とオペレーターの体験を向上させ、コストを削減し、実用的なインサイトを企業に提供します。しかし、最終的にAIを活用する理由は、ビジネス次第です。
コールセンターにおけるAIは、単純にトレンドになっているから、やったほうが良さそう、という理由で導入してしまうと失敗することがあります。AI活用によるメリットや重要性を考える際には、以下を考えてみる必要があるでしょう。
- AIで何を達成したいのか
- 目標達成やKPIにおいて、AIは何ができるのか
コールセンターのAI機能
AIは、コンピューターや機械が人間の知能と同様の認知、学習、問題解決の能力を模倣する技術を指します。AIは、データを分析し、パターンを識別し、自律的な意思決定を行うことができます。
多くのテクノロジーと同様、AIの進歩に伴い、その採用も増加しています。コールセンターでは主に以下のような分野でAIが使われています。
- WFM - AIを活用した呼量予測
- ACD - 高度なレベルでの顧客とオペレーターのマッチングを実現
- IVR – 音声で顧客の問い合わせ内容を理解し、AIが音声で回答
- 応対分析 – リアルタイムで顧客の感情や応対品質を評価
- 応対チャネル – バーチャルエージェントやAIチャットボットなど
以上が全てでありませんが、AIや自動化の活用は、コールセンターにおいて決して新しいものではありません。
AIチャットボットの効果的な活用法
質問への回答、予約の確認、パスワードのリセットなど、大量の反復タスクを処理できるAIチャットボットは、コスト面で大きなメリットをもたらします。
AIチャットボットの場合、まずは特定かつ狭義のタスク(予約の確認、口座残高の確認など)をこなすAIチャットボットから始めることをおすすめします。この結果をもとに、チャットボットを改良し、処理できるタスクや数を増やしていくと良いでしょう。
AIチャットボットが思ったように機能しないと思った場合には、こうしたアプローチが有効です。さらに、特定のタスクのみをこなせるチャットボットだけでなく、人間の会話内容を理解し、人間のオペレーターのように回答ができる高度な会話型AIチャットッボットの活用も検討してみましょう。
オペレーター業務におけるAI活用
AIは日々の呼量を減らしたり、業務を効率化するだけでなく、オペレーターのモチベーション維持や、離職率対策においても、大きなメリットがあります。
・AIによる呼量予測
AIによる正確な呼量予測により、適切な人員配置が可能になります。人手が足りずに、待ち時間が長くなる、逆にオペレーターが手持ち無沙汰になるといった状況を回避できます。
・AIによる応対分析
個々のオペレーターのパフォーマンスを分析し、改善が必要な点や弱点に基づくトレーニングの作成などを行います。オペレーターのスキルアップに繋がり、全体の応対品質向上にもつながります。
・よくある問い合わせを自動で対応
単純な質問など、簡単に答えられる問い合わせはAIチャットボットやセルフサービスで自己解決を促すことで、オペレーターは付加価値の高い業務に時間を割くことができるため、仕事へのエンゲージメントを高めることもできます。
・リアルタイムでの応対支援
AIがリアルタイムで応対内容を把握し、必要に応じてナレッジベースや顧客情報をオペレーターのデスクトップにポップアップで表示します。また、サポートが必要な場合は、SVにアラートを送り、即座に必要なサポートが受けられるようにすることも可能です。
センターの規模に関わらずAI活用の効果は見込める
あらゆる規模のコールセンターがAIを利用し、そのメリットを享受することができます。AIは、膨大なデータを取得し、学習することで、さらにその能力を発揮します。多くの顧客の声や問い合わせデータが集まるコールセンターは、その規模に関わらずAI活用においては最適と言えるでしょう。
これらの分析ツールは顧客に関する洞察を提供する一方で、ボットやバーチャルオペレーターのような顧客対応のAI機能は、便利で満足度の高いセルフサービス体験を提供することができます。
顧客満足度を高め、コストを削減し、オペレーターの生産性とパフォーマンスを向上させ、顧客をよりよく理解したいと考える企業であれば、その規模を問わず、AI戦略を導入する必要があります。
またクラウドサービスであれば、AIを含めた最新機能を手軽に使うことができます。クラウドコンタクトセンターは通常、オンプレミスよりも安価で、使用した分だけ支払えば済みます。
さらに、AI機能を簡単に追加・削除できる柔軟性があり、チャットボットやバーチャルオペレーターなど他のテクノロジーとの連携も簡単です。
AI導入時に注意すべきこと
現在のAIセルフサービスの導入を、IVRの黎明期と重ね合わせて考えてみてください。無限のメニューオプションの海で電話をかけてきた人を漂流させてしまうような悪質なIVRデザインが非常に多かったため、今日に至るまでIVRは悪い評判を持たれています。この悲劇を繰り返さないためには、カスタマージャーニーの文脈の中で、適切にボットを設計する必要があります。
NICEの調査によれば、セルフサービスを開始した顧客の半数はオペレーターに移行することが明らかになっています。したがって、顧客がセルフサービスソリューションで提供した情報を繰り返す必要がないよう、AIチャットボットでのやり取りを、オペレーターにスムーズに引き継ぐ必要があります。
最後に
AIは、コールセンターの運営方法や顧客体験の提供方法を変革する可能性を秘めています。そのため、多くの企業がボットや高度な分析、AIを組み込んだコールセンターサービスに投資しています。しかし、コールセンターのAIは、単にそのためだけに使うべきではありません。
企業は、ビジネスを成長させるために、非常に特定の目的のためにAIを使うべきです。AIの成功の秘訣は、AIの導入にあるのではなく、AIの使い方にあるのです。
AIの導入を考えている場合、まずは初期設計から後続フェーズの実装まで、ロードマップを作成しましょう。これにより、AIプロジェクトが期待されるビジネス成果を確実に達成できるようになります。