コールセンターとコンタクトセンターには大きな違いがあります。どちらも優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供することに注力していますが、そのための機能と手法が異なり、提供できるサービスレベルも異なります。
コールセンターの機能
コールセンターは、主に電話を通じて、営業とサービスのサポートを提供する、カスタマーサービスの組織です。この点は、コールセンターとコンタクトセンターの根本的な違いを表しているため、強調する必要があります。コールセンターは電話サポートしか提供しません。メール、チャット、ソーシャルメディアなどオムニチャネルでのサポートは提供しません。
コールセンターで電話を受けるエージェントは、口座に関する問い合わせ、ホテルの予約、家電の使い方まで、あらゆる分野でサポートを提供します。
コールセンターは、顧客がエージェントにつながるまでの待ち時間、通話の平均時間、一次解決率などを測定します。さらに、コールセンターは顧客満足度とネットプロモータースコアを計算するために顧客満足度調査を行う場合があります。
.コンタクトセンターの機能と役割
コンタクトセンターは、電話だけでなく、他のチャネルもサポートします。これはチャットボットやテキストメッセージ(SMS)、メール、ソーシャルメディアなどが含まれます。チャネルをすべて統合したコンタクトセンターは、オムニチャネルエクスペリエンスを提供できます。ここでは、複数にまたがるチャネルでも一貫した応対が求められます。
コンタクトセンターはあらゆるチャネルでカスタマーサービスを提供するため、KPIや使うテクノロジー、エージェントに必要な研修に違いが生まれます。コンタクトセンターのエージェントは、複数のチャネルで応対できるよう研修を受ける必要があります。
コールセンターとコンタクトセンターにおける16の違い
企業がコールセンターからコンタクトセンターへシステムを転換する場合、ビジネスのあらゆる要素に影響を与えます。以下にいくつか例を挙げます。
エージェントのスキルにおける違い
デジタルチャネルをサポートするエージェントは、通常の応対スキルに加え、SNS上などでテキストベースのコミュニケーションに対応するため、スキルを追加しなければなりません。以下に、コンタクトセンターのエージェントが必要な追加スキルの例を紹介します。
1.メディアリテラシー
エージェントがTwitterやFacebookなどのSNS上のコメントに返信するとき、細心の注意を払う必要があります。場合によっては、炎上など企業の印象を下げるような深刻な事態を招くため、エージェントが押さえておくべき重要なスキルです。
2.マルチタスクスキル
マルチスキルを持つコンタクトセンターのエージェントは、4つのメールと5つのテキストメッセージで会話しつつ、同時進行で2つのチャットを続ける場合があります。すべてがリアルタイムの会話ではありませんが、顧客が長い時間待たされ放置されないためにも、マルチタスクのスキルが必須です。
3.人材採用
エージェントに求められるスキルに違いがあるということは、人材採用の方法も見直す必要があります。採用プラットフォームや、募集要項などもコールセンターの人材採用とは、少し異なります。
4.研修
メディアリテラシーなど、新しく必要なスキルは、研修でカバーすることができます。研修内容に変更を加えるため、エージェントの研修にかける時間が増える可能性があります。さらに、エージェントは新規チャネルの新しいソフトを使用する前に、必ずトレーニングを受ける必要があります。エージェントへ十分な研修やトレーニングを実施する ことは、コンタクトセンターの変革を成功させるために不可欠です。
5.品質管理
ほとんどのコールセンターは品質管理(QM)プログラムを持ち、エージェントの応対を評価し、成果を上げるためのコーチングを施しています。コンタクトセンターは、対応チャネルの増加に伴い、品質管理プロセスを拡張しています。これは、通話録音に加え、パソコンの画面録画、評価フォームの追加、品質アナリストのマルチスキル化、レポートの修正が含まれます。
6.予測
予測はコンタクトセンターへの問い合わせ数を予測することを意味します。通常は、過去のデーターを元に予測を行いますが、サポートチャネルを追加するとプロセスが複雑化します。新たなチャネルでの追加作業に対処できるよう、予測の方法を変更します。ほとんどのデジタルチャネルは非同期のため、予測は時間のかかる問い合わせと、顧客との多彩なコミュニケーションを考慮しなければなりません。
7.スケジューリング
エージェントのスケジューリングは、複数のチャネルを扱うマルチスキルのエージェントを雇っている場合、特に複雑になります。この場合、スケジューリングでは、各エージェントが業務内でいくつのメールやテキストの会話を扱えるか、などの要素を考慮する必要があります。
8.コンプライアンス
コールセンターでは、特定の業種をサポートしたり、クレジットカード情報を取得したり、電話での会話を録音したりする場合は特に、コンプライアンス要件を遵守する必要があります。コンタクトセンターは、メールやチャットなどのチャネルをサポートするため、デジタルチャネル上の応対をどうモニタリングするか、考えなければなりません。これはエージェント研修にも影響を与えます。
テクノロジーにおける違い
デジタルチャネルに対応する場合、ルーティングや応答、レポート作成のソフトが必要になります。以下に、コールセンターとコンタクトセンターで、必要とされるテクノロジーがどう違うのか説明します。
9.オムニチャネルでのルーティング
オムニチャネルルーティングは、すべてのチャネルから入ってくる問い合わせを把握し、定義されたルールに従ってルーティングします。これにより、リアルタイムのチャットや通話がソーシャルメディアなどの非同期チャネルよりも、優先されてルーティングされます。
10.ワークフォース管理(WFM)ソフトウェア
複雑な予測とスケジュール設定を行う場合、オムニチャネルのプランニングに対応するワークフォースマネージメント(WFM)ソフトウェアを使用すると便利です。すべてのチャネルからの問い合わせに対して、適切なエージェントを割り当て、スケジューリングすることができます。
11.エージェントデスクトップ
対応するチャネルが増えると、エージェントが扱うシステムも増えます。複数のシステムを行き来するのは、エージェントにとってストレスになりかねません。必要な機能がすべて1つの画面に統合されたデスクトップであれば、エージェントが効率的に業務をこなすことができます。こうしたデスクトップには、パフォーマンス管理、コーチング、スケジュール管理などの機能が組み込まれている必要があります。
12.レポーティングと分析
コンタクトセンターはデジタルチャネルの効果に関する分析が必要です。運用成果を総合的に確認でき、意思決定が容易になる、統合型のインタラクション分析を使用すれば実現できます。
KPIにおける違い
コンタクトセンターは複数のチャネルを扱うため、KPIを拡張しなければなりません。これにはデジタルチャネル特有のKPIが含まれます。
13. 同じ指標でも、デジタルなKPI
コールセンターは通話と顧客満足度について多くの指標を測定します。コンタクトセンターは、これらをデジタルチャネルに適用することがよくあります。デジタルなKPIには、以下のようなものがあります。
- チャネルごとのお問い合わせ件数
- チャネルごとの一次解決率
- チャネルごとの応対1件あたりの費用(CPC)
- チャネルごとの品質スコア
- チャネルごとの顧客満足度"
14.デジタルチャネル特有のKPI
コールセンターのすべてのkpiが、デジタルチャネルに当てはまるとは限りません。たとえば、ツイートとメールの放棄呼率を測定することはできません。デジタルチャネルでは、専用の測定が必要です。例えば、マネージャーはプライベートなソーシャルメッセージやメールなど、非同期チャネルでの応対も測定できなければなりません。
コールセンターのすべてのkpiが、デジタルチャネルに当てはまるとは限りません。たとえば、ツイートとメールの放棄呼率を測定することはできません。デジタルチャネルでは、専用の測定が必要です。例えば、マネージャーはプライベートなソーシャルメッセージやメールなど、非同期チャネルでの応対も測定できなければなりません。
成果測定における違い
コンタクトセンターが存在するのは、より多くのチャネルで問い合わせをしたいという顧客の要望に応えるためです。顧客満足度の改善に注目しがちですが、エージェントの満足度も意識する必要があります。
15.顧客満足度
当社の調査によると、消費者の多くが、サポートチャネルが豊富な企業を選びたいと回答しているのに対し、現状の企業によるオムニチャネルサポートに満足している消費者の割合は、少ないことがわかりました。
コンタクトセンターはコールセンターよりも必ず顧客体験を改善するとは言えませんが、顧客がデジタルチャネルを好んでいるのは明らかです。さらに、企業は顧客が求めるオムニチャネルでのサービスを提供するために、より多くの努力を支払わなければなりません。
16.従業員満足度
コンタクトセンターでのエージェントの仕事に対する満足度は、業務やスキルによって異なります。例えば、エージェントが常に複数のシステムを切り替えなければならない場合や、特定のチャンネルを扱うことに抵抗がある場合、満足度は低くなる可能性があります。一方、マルチタスクが好きで、最新のツールを提供されているエージェントは、満足度が高くなる可能性があります。
コンタクトセンターではサポートするチャネルが増えるため、それに応じてコールセンターとは異なる機能やインフラを持ちます。デジタルチャネルでのサービスを提供することは、エクスペリエンス・エコノミー(経験経済)において企業が、より良い競争をするために不可欠です。
コールセンターからコンタクトセンターへの転換
コールセンターをコンタクトセンターへ転換する場合、より大規模なデジタル変革戦略の一環として行われることがよくあります。カスタマーエクスペリエンスがより重視されるようになり、企業は顧客が求めるデジタルチャネルでのサービス提供ができるよう、カスタマーサービスをアップグレードしています。
同時に、企業は優れたCXを提供する際にコールセンターとコンタクトセンターが果たす重要な役割を認識し始めました。カスタマーサポートの地位が高まりつつある中、多くの企業は、コールセンターをコンタクトセンターへ変革するために、必要なインフラへ投資しています。